やまびとの散文詩(三)/前田ふむふむ
 

溢れ出して、わたしたちは、それを、小さな胸のなかに
そっと抱きしめるが、時より鳴り響く遠雷の音に、
教会はぐらぐらと音を立ててゆれだして
夥しい海猫たちが、墓石で出来た荒廃した十字路に
むかって、一目散に飛び出してゆく。

やまびとの散文詩―断片10

何処からとも無く聞こえてくる海鳴りの音で、
眠れない夜は、わたしたちは、過去びとが残した
やまびとの歌をうたって泣いた。
ひかりのなかに山々の緑の木霊があらわれ、
花々は踊り、埋め尽くすほど並べてある宝石のように
小川は流れた。わたしたちは、この閉塞した青い断崖で、
起きているときも、夢を見ていたのだ。
朝のひか
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