やまびとの散文詩(三)/前田ふむふむ
 
ひかりとともに、海猫が、わたしたちの脇にとまり、
しきりに目立つように立ち回っているが、
誰も目にとめることをしなかった。
わたしたちは、それが、海猫であるということを、
わからないのだと、主張することで、
よりいっそう、悲しみの意志を、
声を上げて示し続けていたのだ。

やまびとの散文詩―断片11

上から、甲高い呻き声が聞こえて、それを打ち消すかのように
青ざめた不敵な喧噪が響いてくる。
わたしたちは、青い断崖にある唯一の螺旋階段を、
鉛のような重い足で昇っている。風が強く、砂塵が全身を蔽い
眼を見開きながら、高みを目指すが、わたしたちは、何のために、
昇っているのだろう。よく見ると、昇れば昇るほど、
地面が、段々と近づいて来て、迫ってくるではないか。
わたしたちは、もがくように地面に這いつくばると、
塩辛い味の砂が口にはいり、丁度、恐怖に怯える子供のように、
泣き叫んだが、仰向けになれば、広い青空一面に、
大きく、大きく、
夢の山々にいる母の微笑んだ顔が、浮かんでは、悲しいほど
儚く消えてゆく。



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