箱入り娘に関する詩的考察/岡部淳太郎
いぜいであろう。
箱入り娘の
生は彼女の身体と同じく、きっちりと箱に入
れられ、梱包されており、そこから脱出して
彼女が生を謳歌するには、奇術師並みの奇怪
な技が必要となるかもしれぬ。彼女は優しい
笑みを湛える親の目に自らも優しく微笑みな
がら、自らの乳房の重みを厭わしく思うだろ
う。おそらく、燃え上がる水や、流される鉄
骨の方位でしか、彼女は成長出来ないに違い
ない。あるいは、濡れそぼつ熾火か、空中に
留まる掛け軸か。そのいずれであっても、彼
女は月毎に吐き出される血の赤さほどには、
自らを満たすことは出来ないであろう。彼女
はまだ人
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