岬の家/篠有里
 
る事実
誰も知らないだろう、私は取るに足らない良き者だから
自分の深い淵に沈んで、何一つ生み出さず消費するだけ
更に奥の部屋に足を踏み入れなければ、密かな真実はそこにある
一言「あ」と発してみる、館の中には響かない

考えない私は、今までの貯金を食いつぶし、
かつての黄金の井戸を枯らしつつある(気づいてはいるのだけど)
歩を進めて、暗さに慣れた目で、ギシギシと歩き出せば、
砕ける波の音は、繰り返すのにどれとして同じではない
あなたは挫折したギタリスト その指はかつて嘘をつかなかった
私は急に思い出す 斜めに差し込む寒い日差しの中、
音は、いつでもそこにある 望むと望まざるに
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