岬の家/篠有里
 
るに関わらず

でも、今は音も光も色彩も、何もかも乾き果ててしまった
私がそうやって嘆いていても、館の事実は変わらず
ただ、そこにあるという単純な現実は、やはり受け入れがたい
埃が舞う空気を同時に胸一杯に吸い込んでみる
壊れてしまった水晶は、かつての完璧さとは別の価値を得たという
その扉を開けよう、冷たいノブに手を伸ばす それは私?
どこかで、誰かが、オルゴールの蓋を開けた

微かに鳴り響く音色の端が、耳の舳先に引っかかる
目は、物の形を追い始める 扉の意匠を数値に置き換え、
すべてを意味ではなく、データとして捉える事にする
ああ、私の世界はすべて美しい そう判じられたそ
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