岬の家/篠有里
 
状組織
その更なる外縁部に、私の個人的理由とやらは隠され
返答を返さない扉を、力任せに押し開ける

十一月の午後 曖昧な光が差す玄関ホールを、
潮の生臭い匂いが追いかけはじめる
それと同時に、私の脳は疑似記憶の想起を始める
かつてここにあった、私の知らないものをひどく懐かしく見る
足を踏み入れて、革靴が湿気で歪んだ床を踏むと、
その記憶は更に鮮明になり、私は酩酊と軽い吐き気に襲われる
ああ、目に見える世界はすべて美しい

夏のある日、私の元にあなたが訪れて告げた
私には受け入れがたい提案を その時から私の最上は死に
今では残りカスだけが呼吸して、消化して、排泄している事
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