「我に力を・・」/広川 孝治
 
ただゲームとアニメにしか関心を示さない彼
塾で出会った時に彼は
周りの子達から邪険に扱われていた
講師として僕は彼を部屋に呼び
コーヒーを飲ませてあげた時に浮かんだ彼の笑顔に
助けになりたいと本気で思った
しかし彼は
感謝と敬意を
まるで置き去りに育って来ていた
だまって僕の部屋のものを持って帰ろうとしたときに
僕が怒ったのは
本当に彼のことを思ってだったのか
それとも
彼を疎ましく感じ始めていたからなのか
やがて彼は塾にも学校にも来なくなり
自分の部屋からも出なくなり
ただ狭い空間で生きてゆくようになった

願わくば我に
彼を愛し続ける力を与えたまえ
裏切
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