底流の鏡/カンチェルスキス
 
 丼を片付けにいった主人が扉の外を見て
 言った。
 今日、寒いなあ。何度や?
 厨房にいる妻と高校生は
 縦列駐車の話を続けた。
 おれはスープと麺を交互に食った。
 ハンチングのおっさんは
 おれを殺したのは間違いで
 わたしが殺したのは
 きみによく似た人だ、とは
 訂正しなかった。
 巻き寿司を一本追加して
 出て行った。
 
 
 扉が開いて
 作業服の男が二人入ってきて
 一人はトイレに向かった。
 テーブルについたやつが
 二人分注文した。
 トイレから戻ってきた。
 今度の休みはいつだ、という話になった。
 給料日の支払日についても話した
[次のページ]
戻る   Point(2)