偽・大洪水?散文詩/前田ふむふむ
 
殺が、動物のおさたちの命令で行われているのである。
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今日こそは世界中の海が溢れて、森を押し流してしまうと信じる動物たちが、不思議なほど静かにしていて、いつものような殺戮と殺戮にともなう緊張した息づかいが感じられない、それは、動物たちが、すでに、森から逃げ去ったからだ、動物たちにしてみれば、人間との確執のために、どんなに過酷で、惨めな仕打ちにあい、虐げられてきたか、それは、深い歳月を刻み込んでいる、森と動物たちだけが知っている、だから、大洪水の受難の日には、人間と決別して、洪水のおよばない世界である最も高いところに、動物だけの楽園をつくろうとしているのである、太陽が血の色に染
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