偽・大洪水?散文詩/前田ふむふむ
に染まり、海のうえに、ぼんやりと鬱蒼とした森林の亡霊が、揺らめいている日に、動物たちの大きな群れが、雲のうえの大いなる高みを、めざして歩みを進めている。
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人間は大洪水が訪れることを恐れて、月を神と信じるおさたちの命令で、魚に化装して、次々と海に飛び込み、深い海底にへばりついた、海底の心地よい冷たさは、人間たちのこころを蝕み、地上の霊長類の記憶を少しずつ忘れさせていった、一方、太陽を神として信じる少数の慎重な人々は、密かに森に行き、木々を砕いて、多くの労苦に耐えて、大きな箱舟を造って、大洪水に備えた、それは百二十年の期間を要した。造り終えた人間たちは、周到な準備をしてから、息
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