ひかり・ひかる・ひかり/前田ふむふむ
 
いる。小さな穴をいくと、蟹が僕を、見つめる、あわてて、眼をそらして怯えるそばから、海水が流れるぬめった泥のようにさえぎり、蟹はおぼれる。海の波はゼラチン質の乳房のようで、深くするどい錐をさしこむと、全身を震わせて、受けとめる強い包容力を魅せつける。僕は全身のちからをこめて、やわらかい壁に身をまかせる。
僕は、ひかり/ひかる/ひかり/ひかり
きらり/きらり
きらきら/きらきら/きらきら/きらきら

ひかり/ひかる/ひかり 
ひかりを見ている
裏山を登るとひなびた寺院があり、湾曲した海辺が、見わたせる。そこの座りながめると、蝉のいっせいの鳴き声に、かき消されて、海の音は聴こえないが、海は
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