冬の庭にて?印象/前田ふむふむ
 
顔が凍りつく墓場に、少しずつ丁寧に横たえてゆく。見慣れた指紋を浮き立たせて、行儀悪く立ち回る乙女のように、ひかる雲の吐息が太陽の頬を、やさしく撫ぜている。微かなあたたかさを足で手繰り寄せながら。
    
医者の処方した薬を飲み込みながら、
私は流れ落ちる涙を誰に伝えられようか。
早過ぎる夜が戸を叩いていく。夜は亡き人も見ているだろう月が寒さに耐えている。薄暗い部屋の中で
朦朧とした定かでない記憶が、苦しい疼きのために
十分な時を与えられずに、次々と脳裏を過ぎてゆく。
37.7℃ 立ってみて部屋の電気を点ける。
暗い庭が見えなくなるが、暗闇の奥ではすべてが呼吸している。――   
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