「静かの海」綺譚(21〜31)/角田寿星
 
 楽器を持たなかった
ので 手拍子と足踏みでそれに答えた
遠く近く 拡大していく律動
ナイル河の水車が回る
水車もまたうたう

海などないはずなのに 忘れていたはずなのに
潮の香りが届いてきた


 24

夜が明ける頃
暗い心の森の奥で
微かな色彩を放って 鳥が啼いた
ぼくはO.メシアンの音楽を思い出した
メシアンは救世主(メシア)を
連想させる
貧弱な茄子のような連想だが
それでもぼくは微笑んで眠りに落ちた



 25

あなたの瞳の色を
笑顔を
思い出そうとする


 26

フィルターを通したやわらかな光を浴びて
粛然と森
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