「静かの海」綺譚(21〜31)/角田寿星
と森が育つ
分厚いガラスの防護壁に守られて
ぼくらは 防護壁越しに
あるいは映像で 森をながめる
人に造られ 人を拒絶する原初の森
盛り上がる腐葉土
小鳥の啼き声
彼方の
食糧製造プラントが
おぼろに垣間見える
(「我々はこの森によって
完全なる自給自足
完全なる地球の引力の呪縛からの解放を
成し遂げつつある」 とは
ある政治家の言である
移住計画の頓挫と 人口の激減により
「静かの海」の独立が 確立されたことは
何たる皮肉だろう)
月は 徐々に地球から遠ざかっている
と聞く 月が 「静かの海」が
地球を完全に忘れ去った時
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