「いつから・・いつになれば・・」/広川 孝治
 
春の手引きをするような生暖かい風に吹かれながら
倒れた自転車の間を抜けてゆく
倒れているものを見かけても、立て起こさなくなったのはいつからだろう

当たり前のように春の顔を見せはじめた太陽の光を浴びながら
人ごみの中をぶつかりながら歩いてゆく
肩がぶつかったとしても、謝らなくなったのはいつからだろう

日々温もりを加える朝に鏡を眺め
目じりのしわを気にしている
瞳の輝きが失われてゆくことよりも、年輪加わる表情を嘆くようになったのはいつからだろう

「自分の感受性くらい自分で守れ、ばかものよ」
叱咤され、決意を新たに歩んでゆく
己の感性を守り清めることよりも、他者との優越
[次のページ]
戻る   Point(1)