死神と私 −白い蛾−/蒸発王
一本の橋のように見えました
蛾の一枚一枚の羽の光が月の白光をさらに膨らませて
全部の蛾が月に渡った瞬間に
月の白さが爆発しました
雪か蛍とも見紛う白光の粒が月から降ってきます
真珠のような美しい光が
濃紺の夜空を背景に地上に舞い落ちて
たくさんの家に降り注ぎました
あわれにも流れてしまった胎児の魂は
白い蛾になってこの世にしばらく留まり
白い満月の夜に月に還えるのだと
そしてまたこんな白光になって地上に戻ってくる
この光が母親の腹に入ると胎児の心臓が動き始め
この光がしっかり入らなかった胎児はわけも無く流れてしまうのだと
死神は降ってくる
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