死神と私 −白い蛾−/蒸発王
 
くる光の粒を見上げながら
生と死の環を息子に教えています


ふと

白い光の一つが我が家の窓に迷い込んできました
すると生き生きと光っていた粒は
死神に近づいたとたんに
彼の放っている死の予感に感染したちまち枯れ果て
白い蛾に戻ってしまいました
死神はそれを哀しそうに見つめています


その時私は気が付いたのです
息子を身ごもる時に死神がいなくなったわけは
息子を流れさせないためだったことを



思わず死神の肩に手を置くと
死神は哀しい瞳のまま


“白い蛾を見ても殺してはいけませんよ”

と願うように呟き
私を見て笑いました






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