死神と私 −白い蛾−/蒸発王
れば部屋中のそこかしこに白い蛾が止まって
質素な部屋は純白の白で塗りつぶされています
死神は息子を膝にのせて窓際にいました
私が留守の間に死神が息子にどんな教育をしているのか心配です
文句の一つも言おうとは何度も思いました
けれども息子も息子で死神に良く懐いているので
私に勝ち目はありません
とりあえず蛾を外に出そうと窓に手をかけた時
突然 蛾達が騒ぎ始めました
死神は時計をちらりと見てから私に窓から離れるように言いました
死神が窓を開けると
部屋の中にいた白い蛾達がいっせいに満月に向かって飛んでいきます
純白の大群がものすごい速さで月に吸い込まれ
月と地上を結ぶ一本
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