死神と私 −白い蛾−/蒸発王
 

仕事帰りの帰路にて
夏にも珍しく夜は久しぶりに熱病の呪縛を解かれていました
今夜の月は涼しげに白く光る満月で
夕方に打ち水で濡らされた歩道の水を蒸発させています
昼間の蝉時雨に変わってバッタの鳴き声が茂みを揺らす垣根を越えて
死神のところへ息子を迎えにドアを叩きます

ドアを開けたとたんに白い風が私を迎えました
しかし良く見るとそれは大群の白い蛾です
真っ白い燐紛で構成された羽がぼんやりと光っています
悲鳴をあげて振り払うと
だめ という息子の舌足らずの叫びと
遅れて

“白い蛾は殺してはいけませんよ”

という死神の注意が聞こえてきました



見れば
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