温泉にて、お月見/広川 孝治
 
た魑魅魍魎の存在が否定されていったこと。科学技術の進歩により、微小なものまで存在が明白になり、未知のものへの本能的な恐れが放逐されていったこと(例えば病原菌やウィルスの発見により「たたり」等が否定されていく)。さらに、人権思想の普及により、不可侵な人間などいない、と考えるようになり、かつて畏敬を抱いた存在が、今は地に落ちていること(先生への敬意等)。



畏敬。本能的に神々しく感じ恐れ敬うこと。そういう感覚を微妙に失ってきているのが現代人の特徴のように思える。



間違いなく自分は現代人であるように感じている。そうした「不可侵」のもの、と感じる対象がないからだ。




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