温泉にて、お月見/広川 孝治
右することはできない。どれだけ祈ろうが、願かけをしようが、時とともに月は欠けてゆき、やがて闇夜が訪れる。
人力ではどうすることもできないものへの、畏敬。
そして、星たちの頼りない光とは比べものにならない、圧倒的な明るさ。
さらに、その光の醸す神秘的かつ妖しい雰囲気。
それらを夜に見上げる人は、どのような思いを抱いたのだろう・・
芭蕉は、一茶は、良寛は・・・
現代、近寄りがたいもの、不可侵なイメージを持つものが、少なくなったのではないだろうか。そう感じるわけは、明かりが普及して闇を放逐した結果、闇に潜むとされた魑
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)