温泉にて、お月見/広川 孝治
 
したものを心に抱かせる力があるような気がする。それでいながら、人界からはるか離れた神秘的な雰囲気をまとっている。神々しさとなまめかしさを同居させているのだ。



湯気が揺れる。
打たせ湯の音が静寂にこだまする。
湯船には僕一人。



この空間を僕は独り占めしながら、満月を愛でている。



なんと幸せなのだろう。



冬の外気は、のぼせないよう、程よく僕の頭を冷やしてくれる。



月を見ながら考えた。
この美しい光体は古来より愛でられてきた。





「名月や、池をめぐりて夜もすがら」 芭蕉





月の美
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