ユニコーン/光冨郁也
 
手の甲に、指を置く。
 ゆっくりと甲から内側へと、指をすべりこませ、温かい。握りしめる。
(――落ちる)
 わたしの体が、ガラスを突き抜ける。下の駐車場は、森に一変する。声を出せずに、わたしは影に抱きとめられる。弓のように、影はわたしを迎える。手を回す、影の背は、細い。その顔にかかる髪に、わたしは顔をうずめる。甘い香りがする。白い光がわたしと、女を照らす。金色の、ウエーブした髪に、白い肌の、大きな目が、深い。わたしは、女にもたれかかったまま、息は荒い。額に汗がにじむ。
 素足の下には低い草が生えている。森の開けたあたりに、馬がいる。白いその馬にわたしたちは近づく。女に身をよせる馬の頭には、
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