富の物語/アンテ
更に蓄えの一部を使って
だれも金庫に近づけないよう家を迷路仕立てにした
それでも日がたつにつれて心配になったので
窓や扉に毒針や刃物を取り付けたり
認証機を設けたりトラップを仕掛けたりと
思いつく限りの策を講じて
そのたび職人たちに代価を払って
腕や目や記憶を奪い取った
ようやく気持ちが落ち着いて
静かに暮らせるようになったが
蓄えの大半を費やしたせいで
一生暮らすには到底足りないことに気がついた
仕方なく彼女は仕事を見つけて
身を粉にして働き
まとまった蓄えを再び手にしたので
さっそく金庫に大切に仕舞おうとした
けれどしばらく仕事に注力していたせいで
彼女は仕掛
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