学校/刑部憲暁
 
学校には開けることのできない
扉がありました
旧校舎の階段の裏のあたり
七つの南京錠のかけられた扉でした
錠のひとつひとつに一匹の蜘蛛が巣をかけていて
人の手を遠ざけて 日曜日になると
しずかに白くかがやきました
いつのことだったか
わたしは扉をあけてしまった
毎日ひとつずつ蜘蛛の巣をはらい 錠を切断し
扉のうちにあったもうひとつの階段を
降りていきました
そこにもまた 学校があった
その学校にもどるたびに 教室の机と椅子の
ひっそりとつめたい感触にふるえます
だれかがいなくなってひさしい
やさしい色の机と椅子
腰かけてひじをついても
カタコトゆれることもなく 
[次のページ]
戻る   Point(2)