手向け(骨)(糸)(雪)(暁)/蒸発王
久しぶりー
を
連呼しながら
いぶかしげな彼女を
喫茶店に押し込んで
甘い物好きな彼女のために
キャラメルマキアートを2つ
注文してしまう
ああ コレってナンパなのかしら
でも
冷たそうな
彼女の頬が
体温を宿して行くのを見て
潜めた眉が
キャラメルの匂いと一緒に
緩んでいくのを見て
アタシは正解だ
と思った
秋の終わりに
彼女の愛した
あの能天気な馬鹿男は
こんな美人を残して
逝ってしまった
彼女と会うのは
馬鹿男の葬式以来だった
頑固で堅物で無表情で優等生
それが私の知る
学生時代の彼女
校則破
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