ろみじゅり/田代深子
イトレ招き非の打ち所のない微笑
良家の子女はこうでなけりゃ
空のコーヒー碗にも気づかぬ粗忽者が
一流リストランテの給仕長気どりで
アンティパストプリモセコンドおふたりに
ドルチェエスプレッソまでたっぷり三時間
ああスローフードの宵は更けゆく
語らうのはささやかなことばかり
いつかある晴れた日に
公園でランチバスケットを広げ
鳥にパンを投げながら過ごせたら
なにがしとやらの舞台を観て
あのプリマにふたり花を届けたり
長い休暇には高原でテニスと乗馬
彼にはすばらしい栗毛と青毛がいる
風の午後に窓を開け抱き合って眠れたら
言葉みじかく沈黙はながい
かわりに語らうは指
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