環/アンテ
 
らったものが
なぜ彼女を選んだのか
どれだけ考えても判らなかった
生き物はいつか死ぬ
ことはもう知っていたから
泣きたいのに涙も出なかった
自分にはどうにもできないことは
諦めるしかない
なんて
知らなかった

道が途絶えて
広場に出る
麻袋は眼球ではち切れそうだ
他にもまばらに人がいて
みな重そうに麻袋を背負っている
広場の真上で
鳥たちが舞っている
だれが言い出すともなく
全員が広場の中央に眼球を積み上げ
火を付けると
湿った白い煙がたち上る
空まで真っ直ぐにのびた煙のまわりを
鳥たちが回りだす
何度も何度も
回りつづける

初めて笑った時
[次のページ]
戻る   Point(2)