◎吉増剛造覚書?ハルキ文庫版「吉増剛造詩集」感想 /石川和広
 
がい
 つしか後方から騎乗位の美人が追ってきて
壮大につづく宇宙の白壁も消え途
 方にくれてる杜子春てわけだ
ああ
心凄き
地獄だぞーなに、そうじゃあるまい
                        (「渚にて」から引用)


「時代遅れ」=つまり、今ここから遅れた歴史をなぞる位置からの逆爆走。今ある文学を崩して、杜子春に変わる「変化(へんげ)」。古いものに密通しようとするドラマに生きる
「おまえ」=吉増



○ 第一部

  帰ろうよ

 歓びは日に日に遠ざかる
 おまえが一生のあいだに見た歓びをかぞえあげてみるがよい
 歓びはとうてい誤解と見あ
[次のページ]
戻る   Point(6)