◎吉増剛造覚書?ハルキ文庫版「吉増剛造詩集」感想 /石川和広
かった様に、額に、汗を滲ませ、沈み行く。
(「死馬が惑星を走る日は」から二節引用)
初期に比べ歩行のリズムが障害者のびっこの韻律に変わっている。繰り返すシフトチェンジという言葉がラップのようでいい。ゆっくりラップ。日本語への違和と現象の記述が同時に進行している。そして死んだ走者(円谷)やテンポイントに語りかけるこだまのような声。世界を見た吉増は明らかにローカルなものをかつても歩いていたが、今度は本当に他界(死者たちが走る世界)が見えるように追いかけつつ引き帰しつつ書かれている。しかし憑依の気配はない。明晰さは失われていない。繰り返しが作る
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