◎吉増剛造覚書?ハルキ文庫版「吉増剛造詩集」感想 /石川和広
作るリズムに加え、初期とはちがう地名や人名への呼びかけが特徴だ。初期は、自分はここにあるという印だった名詞が、第三部では、それ自体を物語、歌の中で、呼び合い、たくさんの声が重なるように、死者や土地が覚束ない足取りのほうから呼びかけられている。僕は「死者が惑星を走る日は」がタイトル的にもリズム的にも好きだ。「織姫」の「テルさん」という呼び声も印象深い。
どこか彼方への呼びかけという気がする。第一部の垂直性から水平そして段差と、息遣いが深くなった印象である。
高一くらいの女ノ子、三人は室内のひかりに溶けた。
トロッコ?
路床に小石の聲、水に濡れたスカートを幾度も見上げた。
トロッコ、
とろっこ?
テルさん! テルさん!
(「織姫」から引用)
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