半生記/炭本 樹宏
 
地のせいにして寮つきのバイトで家を出たこともあった
 大阪、長野、愛知、東京、神奈川、いろんな所にいった
 いつも一人だった
 どのバイトも長続きしなかった
 故郷に帰ってきては引きこもっていた
 母はそんな僕にひどく憤っていた
 けんかは毎日のようにあった
 何度も死のうと思った
 首吊りをしようとしたがロープを掛ける場所が見つからずやめたこともあった
 ダムから飛び降りようとしてあるいて出かけたが遠いのでやめたこともあった
 暗黒の時代だった
 当然恋人もいなかった
 寂しかった、情けなかった、苦しかった、欲望だけが空回りしていた
 そんな僕にも春が訪れた
 バイト
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