昔の駄文「詩の人称について」/佐々宝砂
 
で、『小説道場』で続けられていた小説の視点と人称の話に倉橋由美子の名前が出てきたときは、かなり驚いたし嬉しかった。いまはもう『小説道場』が手元にないので正確な文章を引けないのだけれど、中島梓は確かこんなことを書いていた(かなりうろ覚えである)。

「人称には一人称と三人称がある。二人称もあるにはあるが、それを使って成功した例は倉橋由美子くらいしか知らない。」

 10枚で息切れするくせに己の文才を疑わない小生意気な高校生であった私が、これを読んで「それじゃ二人称で書いたれ」と思わなかったはずがない。しかし、それまで通常の小説は視点が固定されてるということすら知らなかった私である。うまく書け
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