『9月11日の線香花火』/川村 透
のところにしゃがみこむ。
新しい蛇を太もものあたりから突き出し、燃え盛り震えている蛇に押し付けると
火花は一気に倍以上に膨れ上がり煙と臭気が少女の頬にまとわりついてくる。
モノクロのペチカ寒々と燃える中空の蛇の、筒
燃え尽きた死骸たち死屍累々、草むらに倒れているその上から降り注ぐ
容赦のない轟音、雪崩落ちる火の雨に打たれ
少女は筒の中に棲む蛇の目をした小人のことを想う。
--さくり、
と筒を押し開くと果実のように火薬をひとつぶ、ひとつぶ抱きしめた女たち
緋色の浴衣をはだけ臨月のかぐや姫の嗚咽
しゅうしゅうと爬虫類じみた鳴き声をもらし
生きながら焼かれる喜びと産みの苦しさ
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(5)