かなしい帝國/石川和広
 
いる間
たくさんの紙切れがおちてきて
わたしはどこまでも
遅れる
その遅れのさなかに
世界があくびして
わたしはたまらなくなる



いのちということばの
氾濫
あるいは反乱
息継ぎが下手で
コップの水を飲み干して
ここまできました
そしていのちです
いのちは
顔で
それぞれひとりで
言葉で
つきつけてきて
それぞれこぼれて
流れていきます
泳ぐ魚のうろこといっしょに



今日は
しんどいなあ
と大阪弁をつぶやく
わたしは
人の間を落ちこぼれて
すりきれて
その傷口から
野バラが咲きました



爆弾をとる

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