小詩集「書置き」(七十一〜八十)/たもつ
餌を
カメに与え始めた
カメってくさいね、と僕が言うと
くさいね、と彼女は答えた
+
届いた荷物には
「過去」
とだけ書かれていた
煮ても焼いても食えねえな
そう思いながら開けたら
「生食用」
と記されていた
+
やわらかい
握れば掌の中で縮み
あるいは形を変え
それでも戻ろうとして
わずかばかりの負荷が
自分から一番遠いところにある
中心に届こうとする
午後は音がするのだ、と思う
なるべくたくさん拾い集めて
並べていくと
石畳の上
雨ざらしになる
+
漢字練習帳に
死体。死体。死体。
と書き綴った日が
確かに私
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