とあるじーさんからのたより/ポロリ
にこやかな笑みから真っ白に輝く歯を覗かせていた。話は知的な話が多く、この間聞いた話は、英語について母音で始まる名詞にはなぜ[a]でなく[an]が使われるのか、というような話だったと記憶している。物腰は柔らかで、女性の香水をあてるのが得意で、ダンスはなんでもこなす人だった。
その彼が突然年賀状を送ってきた。しかも官製ハガキだ。昔から泥ついた庶民的な行事はせず、手紙を書くにしても羊皮紙と蝋でスタイリッシュに決めねば許されないという人だった。なので、いったいどうしたことかと思って、電話をかけたが、いっこうに出る気配が無い。
そこで、年賀状が届いた翌日、私は妻と連れ立って、新年の挨拶がてら、赤坂さ
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