スプートニクの泣いた話/蒸発王
五日分の水もつきた
五日分の酸素もなくなった
『さむいね』
『さむいね』
本当は僕は寒いなんて
感覚は無いのに
『大好きだよ。すぷうとにく』
好き、だなんて
僕はそんな感情わからないのに
『僕も大好きだよ』
僕と彼女の最後の会話
どうして?
どうして
神様?
僕はかまわないのです
露と稲穂の醜い争いの産物の
僕など
消えてしまえば良いのです
けれども
けれども
彼女だけは
あの小さな天体のような
蒼い目の
彼女だけは
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