ただの独白。誰にも読まれなくて構わない。/あさみ
 

 先に記したように、Sは誰とでも容易に友達になれた。誰にでも優しい笑みを見せ、誰でもを笑わせることができた。
 しかしこれを八方美人だと捉える人もいるだろう。特に小学生高学年にもなった女子という生き物は、その手のことに酷く敏感である。当時の私もその少数派のうちの一人であり、誰にでも優しくできる彼女を妬み、また、自分以外の人間に容易に向けられるその笑顔と慈愛に、嫉妬した。
 そう、嫉妬だった。
 私は彼女の優しさを独り占めしたかった。その笑顔を自分だけに向けてもらいたかった。彼女の振りまく幸せを、自分だけのものにしたかった。幼くて愚かな私は、そんな自分の感情すら正しく捉えることができなく
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