香水不全 日々の垂れ流し20050905/A道化
た。
誰の為でもなく自分の為だったから、また、あまり私は外出をしなかったから、香水をつけるのは主に眠るときだった。快い香りと、ベッド上で整えられた布団に包まれたら、自分が幸せに生きてゆける気がした。けれど、たいてい、香りは朝には消えていた。
つけすぎた香水は顔をしかめさせる。どれだけ美しくとも過剰になれば香りは不快感を催させる。幼い頃、香水なんてケバケバしい大人の象徴だと思っていた。眠るときなら自分にだけ感じられればいい。感じて欲しい人がいるなら、その人が近くにいるときに気がついてくれればそれでいい。けれど、感じたくもない他人の過剰な香りを呼吸せざるを得ない状況は割と多い。
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