プール跡/フユナ
 
けれど、でもサトウくんは立つ。
 テーブルはおよそプールの真ん中だったらしい。もう泳げる気がしない、とわたしたちが言ったら、僕もだよ泳げる気がしない、とサトウくんも言った。でも泳げたんでしょう、と聞くと、傾げるサトウくんの白い首筋



サトウくんの好きだった女の子はミチコさんと言ったらしい。内気なサトウくんはミチコちゃんと呼ばなかった。でも本当は呼びたかった。わたしたちが夕飯を食べていると、たまにミチコちゃん、が落ちて混じっているから知っている。夏には落ちていない(サトウくんは内気だから)、かすかな、ミチコちゃん、という名前。やさしいのにからからにかわいている、ミチコちゃん、は野菜の中
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