五十音頭韻ポエムな〜の/佐々宝砂
 




[に]


日曜日の日記には
煮詰まった苦笑いを
におわせたくないのです

虹は握れませんが
逃げ水は逃げますが

にわたずみは
にび色に濁りますが

贋者の名を担っても
贄として憎まれても

日曜日の日記には
憎まれ役のにやにや笑いを
にじませたくないのです

似気なく
西日を睨みつければ

にわかに
にいにい蝉にぎやか




[ぬ]


抜け目なく
ぬけぬけと主は盗んだ
鵺(ヌエ)よ

ぬるみぬかるむ沼から
ぬっと抜け出て
濡れ羽色のぬらぬらを
ぬかりなく脱ぎ去り

主は盗んだ

抜き差しなら
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