俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
「うるさいな。ひとの話に口を挟むな」
シゲジロウはダイスケの方に手の甲をひらひら振って、もう引っ込めという仕種。
「相変わらずだなあ。たまには句会に出てこいよ」
植山老はのそりのそりと歩く大型犬に引き摺られるようにして酒屋の前を通過した。
「ふん、あんな隠居爺さん婆さんの集まりに出ても、なんも面白くないわい」
そう呟くとまた新聞記事に目を戻した。
むかし誘われるままに句会に参加したが、じきに飽きてしまった。俳句だけでなく詩吟や三味線もかじったが、どれも長続きしなかった。何をしても、ときめきがない。恙なく日が過ぎていくのは健康な証拠とはいえ面白くない。ちっともドキドキしない。
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