俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
。
「そりゃあ、歳のせいだべさ、オヤジ」
「へっ、ばか言え。まだまだお前には負けんわい」
シゲジロウは自分の中年時代とそっくりになってきた長男を疎ましげに睨みつけた。そして手持ち無沙汰にポケットから皺くちゃにつぶれた「ひびき」の袋を取り出すと朝刊を広げながら一服喫った。
「おう、カムイ市に新設されたレスキュー隊が、いま町に来ているんだってよ」
「そうだってな。昨日、配達に行った先の役場の助役から聞いたべ。朝日地区で大規模な訓練を一週間やるんだって」
ダイスケが歯を磨きながらモゴモゴと言う。
「ふーん、わざわざこんな田舎でねえ。都会には広い場所がないのかねえ」
シゲジロウは大袈
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