俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
わすなよ」
ダイスケが呆れて言った。
「何言ってるんだよ。これ見てみろ。ここをこうすると、簡単に直るんじゃないか?」
引っ掛かっている缶を右手でぐいぐい押した。が、なかなか外れない。肩の付け根まで販売機の中に腕を突っ込んで力まかせに押し付けた。その途端、「ガコン」という音とともに当の缶ビールがリングの外に転げ落ちた。
「やったぞ!」
得意げに叫んだ瞬間、スイッチが入ってリングが作動した。
「ぎゃっ!」
リングは次の缶を先頭に配置するための回転の際に彼の手首を巻き込んだ。鋭い痛みが真っ直ぐに脳に伝達された。
「どうしたんだ!」
そばにいたダイスケが吃驚びっくりして販売機を
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