俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
機を覗き込んだ。金属製の輪が父親の手首を噛んでいた。
「ぬ、抜けないっ!」
「大丈夫か、オヤジ!」
ダイスケが咄嗟にその腕をつかんで引っ張った。
「ぐわっ、この野郎、手首が千切れるっ!」
取り乱して叫んだ。よほどの激痛だったのだろう。目に涙を浮かべている。
「ご、ごめん・・・」
息子はあわてて手を放した。
挟まれた手首から血が流れ出した。皮膚が破れたのだ。しかもリングはさらに回転しようとして食い入って来る。
シゲジロウは手首を切断される恐怖に戦慄おののいた。
「た、助けてくれっ! 110番だ! 119番だ! 早く医者を呼んでくれ!」
ダイスケが店からバールを持ち出
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