俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
子もない。
しかし、缶ビールが落ちてこない。硬貨の受け入れと同時にスイッチが入って、缶ビールを立てて差し込んであるリングが回転し、一番先頭のものを受け皿に押し出す仕組みのはずだが。
右手を機械の中に伸ばし、あちこちデマカセに引っ張ったり押したりしてみた。何の反応もない。ついには顔を半ば突っ込んで内側を子細に観察し始めた。
そして、奥の方のリングの下方に缶ビールが一本横倒しになって引っ掛かっているのを発見した。
「これだ、これだ。おーいダイスケ、ちょっと来てみろ!」
シゲジロウは、親の威厳を示すのはここぞとばかり息子を呼んだ。
「なんだよ、おやじ。あー、また勝手なことして。こわす
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