俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
ら立ち上がった。そういえば今日メーカーの人が点検に来る手筈になっている。硬貨を入れても品物が出てこないという苦情が相次いだのでダイスケが業者に連絡をとったのだ。
彼は販売機を正面から見た。硬貨の投入口に使用不可の貼り紙がしてある
「ダイスケのやつ、自分で調べたんだろうなあ?」
硬貨が途中で詰まっているくらいのことなら業者を呼ぶまでもない。帳場から鍵の束を持ってくると、なかの一つを取り出して鍵穴に差し込んだ。販売機の前面が扉のように開いた。
内部も見たところ異状はない。貼り紙を剥いで硬貨を数枚入れてみた。すると硬貨はスムーズに落下して一枚ごとに「ガチャ」と音をたてた。詰まっている様子も
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