不確かな存在/チャオ
ある物理学者が、人の数だけ次元は存在するといった。人と人が出会うたびにそれらの次元はゆがみ、分裂し新たな次元を生み出していくと。
21歳の春。地元の小さな山の上。見晴らしのいい場所だった。その場所で、不確かな存在を感じた。不確かで強固な存在。僕は目の前にある空気にそれを感じ、頭の後ろにある空気にそれを感じ、あらゆる空間にそれを感じた。
隕石が落ちてきたと思ったら、宇宙船だった。宇宙船に死んでしまった宇宙人と、何らかの映像が残されていた。それがビデオテープのようなものだったと考えて、第一発見者は恐れながらもその再生ボタンを押した。
大学生の一人暮らし。アパートメントには誰もいない。
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