汚れた棒縞のドレス/吉岡孝次
 

葉擦れの音しか聞こえない (月下の)
茂みへと 一人の女を沈めてきた孤独者だ
雲の切れ間からのぞく理性のひかりを
存分に 裏切り
それが父の欲望の起点である棒縞のドレスを
ぬかるみへと きっと献じてきたのだろう
パーティーが終わり
それからずっと付け狙っていた時の長さを
結実させるため
汚れた棒縞のドレスを
彼なりに愛し その一日の答えをきっと得たはずなのだ


靴を揃えて明りを消し
あたたかな家庭の味をかきたてようとビーズの暖簾をくぐってゆく
蛍光灯の紐を引いた直後のどこにも属さないひとときに
思った ああ
「次」は うまくタイミングを捉え
きちんと背広
[次のページ]
戻る   Point(0)